北海道の道路網を構築した開発道路

はじめに

一般的定義

「開発道路」という用語は、一般的に不動産や建築で使われます。

  • 建築基準法第42条第1項(第2号・第4号)で定める道路。
  • 一例として、都市計画区域・準都市計画区域内を開発するために設置する道路。都道府県知事または政令市長の許可が必要(例外あり)。

詳細は、関係法律等をご参照ください。

本稿で記す内容

本稿で記述する開発道路の定義は、上記と異なります。

  1. 奥地等産業開発道路整備臨時措置法により指定された、都道府県道または市町村道。
    • 上記法律の公布は、1964(昭和39)年6月24日です。
    • 山間地で交通条件が悪く、産業開発を必要とする地域の道路を国土交通大臣が指定し、官報で公示します。
    • 北海道に該当路線はありません。
  2. 道路法施行令第32条により指定された、北海道道または北海道内の市町村道。

本稿では、2について説明します。

指定と管理

開発のために特に必要と認めた路線の全区間または一部区間を、国土交通大臣が指定します(道路法施行令第32条第1項・第3項)。

指定に際し、国土交通大臣は道知事の意見を聴きます(道路法施行令第32条第2項)。

開発道路に指定された道路の管理は、国(北海道開発局)が北海道または市町村に代わって行います。管理の内容は、新設・改築(改良)・維持・修繕・災害復旧です。指定路線によっては、これら管理をすべて実施するとは限りません(道路法第88条第2項、道路法施行令第33条・第34条)。

選定基準

「開発のために特に必要と認め」る基準は、次の文書により定めています。

  • 『開発道路の選定基準について』(1954年道発212号・建設省道路局長通達)

基準は大きく4つに分けられ、通達では6つに分類しています。

  1. 未開発資源を開発・運搬するために必要で、工事規模が大きい道道または市町村道。
  2. 地域開発計画が決定された地域内にあり、資源開発のため必要で、工事規模が大きい道道。
  3. 開拓集落を結ぶ道路。
  4. 国の施策上、特に必要と認められる道道。通称は維持線。該当路線は表2▼を参照。

国による建設・維持の負担

開発道路の建設・維持には国の補助があります。その割合の歴史を表1にまとめました。単位はパーセントです。

表1 国の負担率(開発道路)

表1-1 1952年度~1970年度
番号政令施行年月日補助割合
1第479号1952年12月4日100
表1-2 1971年度~1977年度
番号政令施行年月日新設・改築除雪事業維持・修繕等
2第90号1971年4月1日1009080
3第145号1972年5月1日959080
表1-3 1978年度~1980年度
番号政令施行年月日新設・改築(建設)新設・改築(維持)除雪事業維持・修繕等
4第120号1978年4月5日95909080
5第80号1980年4月5日95909075
表1-4 1981年度~2009年度
番号政令施行年月日新設・改築(建設)新設・改築(維持)除雪事業施設整備イ施設整備ロ維持・修繕等
6第63号1981年4月1日908585857070
7第133号1985年5月18日807585756565
8第154号1986年5月8日807585756565
9第98号1987年4月1日757085756560
10第98号1991年4月1日807585756565
11第94号1993年4月1日80(削除)85(削除)66.770
表1の注意事項
  • 新設・改築のうち「維持」は維持線(上記選定基準の4に相当)の略です。その他は建設線に含まれます。
  • 施設整備とは、交通安全のために実施するものです。6以降のイとロは、次の事業を指します。
  • 上記イとロは、交通安全施設等整備事業の推進に関する法律(1966年4月1日公布)の、第2条第3項第2号で規定しています。
  • 維持・修繕等にかかる費用は、除雪事業と施設整備の費用を除きます。
  • 施行日が4月1日の政令は、1991年は3月30日、他は3月31日の公布です。
  • 1と2を除き、負担率は該当年度の予算で施行する事業から適用されます。

表1で分かるように、当初は国が全額負担していました。その後、国が負担しない分を北海道または市町村が負担することになりました。なお、建設・改築の国負担率が95パーセントに減った1972年、市町村道の開発道路はすべて道道に昇格しました。市町村の負担を軽減する狙いかと思われます。

表2 維持線
指定路線名最終路線名区間解除年月日
札幌根室線花咲港線全線1973年9月10日
入舸岩内線古平積丹神恵内線全線1982年4月1日
倶知安入舸線
入舸余市線
函館臼尻森線同左一部1970年10月1日
尾札部戸井函館線同左全線1970年10月1日
八雲熊石線同左一部1982年4月1日
今金八雲線八雲今金線全線1983年4月1日
長万部東瀬棚線同左一部1970年10月1日
倶知安喜茂別線同左全線1970年10月1日
札幌沼田線美深北竜線全線1975年9月9日
浜頓別常盤線浜頓別音威子府線全線1982年4月1日
遠軽上湧別線上湧別留辺蘂線全線1975年9月9日
遠軽留辺蘂線
釧路弟子屈線同左一部1982年4月1日
中標津標茶線同左全線1982年4月1日
中標津標津線同左全線1970年10月1日
白糠本別線同左全線1982年4月1日
網走小清水弟子屈線同左全線1982年4月1日
遠軽上川線同左全線1975年9月9日
生田原上佐呂間留辺蘂線留辺蘂浜佐呂間線一部1978年3月31日

指定路線の推移

整備費用を国が全額負担することから、当初は市町村道を中心に多数の路線が指定されました。

1960年代後半以降から、新規指定は減少します。1975年以降は、ほぼ年に1本ずつ指定されました。

1989年の増毛当別線が、最後の新規指定路線です。

2004年から2006年にかけて、工期の長期化や費用対効果の見直しで13本の指定を廃止し、5路線が最後まで残りました(名寄遠別線富良野上川線美唄富良野線北進平取線北檜山大成線)。

権限の移譲

道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律(通称・道州制特区推進法。平成18年法律第116号。2006年12月20日公布。2007年1月26日施行)第7条第2項第4号のハの規定により、開発道路の事業内容を計画・実施する権限が北海道へ移譲されました。

国が負担する費用の割合は変わりません。道の計画に対して、国から交付金を出す形になります。2009年5月22日の国土交通省告示第569号で、北海道の開発道路が対象に指定されました。2010年度から実施され、同年4月1日付で開発道路指定廃止の告示が公布されました。

北海道の道路整備に大きな貢献を果たしてきた開発道路制度は、実質の幕を下ろしました。

参考文献
『北海道道路史 1 行政・計画編』(北海道道路史調査会編)
  • 開発道路については、155ページから165ページまでと、377ページから395ページで詳述しています。
  • 同書は1990年に刊行されました。古書店で入手可能です。3巻セットで販売しており、価格は1万円台から(他の2巻は技術編と路線史編)。
  • また、次の施設で閲覧可能です。
  1. 札幌市中央図書館(札幌市中央区南22条西13丁目)
  2. 北海道立図書館(北海道江別市文京台東町)
所蔵する図書館は、他にも探せばあるでしょう。