指定区間の起点「増毛郡増毛町大字舎熊村字信砂御料1706番」は暫定だったらしく、当該地番から始まるルートは計画されていない。
下表は、増毛稲田線交点から恵岱別大橋にかけてのルートを決めた告示である。
区間 敷地の幅員 延長 増毛郡増毛町大字舎熊村字信砂1703番から 雨竜郡雨竜町国有林深川営林署33林班い小班まで 10.00m ~ 87.50m 0.886km
「字信砂1703番」は1706番の北東に隣接する地番で、告示図面を見ると1706番も通る。当初は恵岱別大橋手前で増毛稲田線と立体交差する計画を、平面交差に変更している。より分水嶺に近い1706番から分岐すると、勾配と線形に無理が生じたのかもしれない。
では1703番が起点だったかといえば、違うのである。
起点であれば 0.00m となる延長(キロ程)が、いきなり 300.00m から始まっている。前頁で、資料によって延長に 400m の誤差があると書いた一因だろう。
告示区間の実測線と地質調査用に作成された『作業行為位置図』に描かれたルートを、図1▲に示した。
黒い線との交点から1703番までが、0.00m ~ 300.00m と推定される。黒い線は増毛稲田線の線形改良構想である。憶測の域を出ないが、スキー場計画に合わせたものと考えられる。むろん、事業化に至らなかった。ちなみに、交点の地番は1702番である。
さらに『実測線調査業務平面図』を見ると、ここまで触れた線形と異なって、増毛稲田線がカーブする地点から直進している。図2にルートを示した▼。距離が長くなる分、線形はより緩やかになる。『実測線調査業務平面図』は1996年度か1997年度の資料とされる。工事中断で区域変更はされなかったが、おそらくルートの最終形であろう。なお、交点の地番は1698番2である。
「1706番」「1703番」「1702番」「1698番2」と4とおりの起点が検討された事実は興味深い。工事が本格化していたら、起点の地番は修正されたに違いない。
トラス橋やアーチ橋との比較の末、ラーメン橋が採用され、1991年度に予備設計が実施された。材質はプレストレストコンクリート(PC)である。
以下の点で有利とされた。
予備設計の段階では増毛稲田線と立体交差する構造だったのを、本設計では平面交差に改めた。そのため、橋長等に変更が生じている。橋脚は低めに抑えられ、橋長短縮により1基減った。予備設計の立体交差は、5.3m ほどの高さを確保していた。
| 予備設計 | 本設計 | ||
|---|---|---|---|
| 橋長 | 373.000m | 橋長 | 333.000m |
| A-1橋台高 | 9.000m | ||
| P-1橋脚高 | 16.000m | A-1橋台高 | 15.000m |
| P-2橋脚高 | 32.000m | P-1橋脚高 | 31.000m |
| P-3橋脚高 | 50.700m | P-2橋脚高 | 42.200m |
| P-4橋脚高 | 48.000m | P-3橋脚高 | 41.500m |
| P-5橋脚高 | 58.500m | P-4橋脚高 | 53.500m |
| P-6橋脚高 | 24.700m | P-5橋脚高 | 17.200m |
| P-7橋脚高 | 24.500m | P-6橋脚高 | 19.000m |
| P-8橋脚高 | 15.000m | P-7橋脚高 | 13.000m |
| A-2橋台高 | 13.500m | A-2橋台高 | 11.500m |
| 幅員 | 8.000m | 幅員 | 8.200m |
| 支間割 | 96.300m+195.000m+78.500m | 支間割 | 56.300m+195.000m+78.300m |
| 型式 | 3径間連続PCラーメン箱桁 | ||
| 表注-高さが太字の橋脚・橋台は建設済み。 | |||
現場周辺に、恵岱別川右岸へ通じる道はない。資材運搬・建設の足掛かりとして、工事用道路が建設された。本線がAルート、仮橋2号橋で左岸に渡る支線がA-2ルートである。結果として、A-2ルートは本来の役割を果たせなかった。仮橋は上部の構造が3径間と共通で、橋脚を2本設置したのも同じである。ただし、上流に架かる2号橋の方が橋脚高は長い。
仮橋は工事中断に伴い撤去されたと思われるが、その時期は不明である。
| 1号橋 | 2号橋 | ||
|---|---|---|---|
| 橋長 | 64.080m | 橋長 | 64.080m |
| 橋台高A-1・A-2 | 3.500m | 橋台高A-1・A-2 | 3.500m |
| P-1橋脚高 | 8.100m | P-1橋脚高 | 13.100m |
| P-2橋脚高 | 8.600m | P-2橋脚高 | 9.900m |
| 幅員 | 4.000m | 幅員 | 4.000m |
| 支間割 | 21.500m+19.500m+21.500m | ||
図2。赤色が実測線調査による増毛当別線のルート、紫色が恵岱別大橋、橙色が工事用道路を示す。マーカーをクリックすると、該当地点の情報を表示します。 初期画面へ
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写真A・2004年9月15日撮影。工事用道路の痕跡が残っている。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は3万分1。
恵岱別大橋を過ぎると5パーセントの上り勾配にかかり、曲線半径が順に 250m・225m・300m のカーブと、4か所のボックスカルバートを設ける切り通しのルートで、続いて延長 300m の恵岱別トンネルを曲線半径 300m のカーブ上に掘削する計画だった。実測線調査はここまでで、その先に暑寒別橋(橋長 88.0m)を架設し、暑寒別トンネル(延長 990m)の途中から暑寒別天売焼尻国定公園の区域に入るルートを想定していた。
暑寒別トンネルを抜ける付近までが留萌開発建設部の担当である。さらに 1,180m 進んだ地点から、雨竜町道暑寒別線交点までは1993年11月に測量を実施した。該当の告示が下表である。
区間 敷地の幅員 延長 雨竜郡雨竜町字上オシラリカ原野道有林滝川経営区52林班10小班から 同町字国領297番7まで 10.40m ~ 113.00m 1.523km
告示された当時、区間内の橋梁は蓑島橋だけであった。その後、町道交点近くに 100m 級の橋梁が追加されている。
蓑島橋は起点からおよそ 6km の地点にあり、蓑島沢川に架かることから名付けられたのだろう。橋の付近は、3.75パーセントの勾配で下っている。
告示区間のカーブの曲線半径は順に、650m・250m・300m・1,500m となっている。
| 橋長 | 85.000m |
|---|---|
| A-1橋台高 | 10.000m |
| P-1橋脚高 | 16.500m |
| P-2橋脚高 | 16.000m |
| A-2橋台高 | 8.000m |
| 幅員 | 9.200m |
| 支間割 | 26.000m+32.000m+26.000m |
暑寒別線交点より南は、計画だけで終わった区間である。
交点を過ぎて間もなく、国領大橋(橋長 265m)でペンケペタン川を渡り、尾白利加川左岸の一段高い所を上流に向かって進む。
2km 余りで左へカーブし、尾白利加橋(橋長 344m)を渡って新十津川町に入り、最大の構造物・徳富トンネル(延長 2,294m)で増毛山地東部を貫く。トンネルの途中までが国定公園の区域内である。
徳富トンネルを抜けると奥和歌大橋(橋長 273m)を渡り、進路を南南西から西へ変えて内浦橋(橋長 102m)を渡り、再び南へ進んでワッカ林道交点に至る計画だった。
徳富道路は事業がほとんど進捗しなかった。
富士形山の麓を東から南へ回り、徳富川を越えて南幌加貯水池の東へ回り、延長 600m のトンネルを抜けて当別町に入り、一般国道451号交点に至るルートを予定していた。橋梁は4か所で、橋名は徳富1号橋から順に数字が増えて、最後は徳富4号橋となっている。徳富川に架かる徳富3号橋の橋長は 100m 級のようだ。
もし一般国道451号青山トンネルを改築する時が来て、別線で整備することになったら、終点部分のルートに陽の目が当たるかもしれない。